「みなさんは1分間に何回呼吸をしていますか」
こう問いかけられて果たしてどれほどの方が正確に自身の呼吸回数を答えられるものだろうか。じつはこの問いかけに正解はない。むしろこの問いをきっかけに自分がいまどのような状態にあるかを知ることに大きな意味があるという。
質問の主は金ヶ江悦子さん。2010年ミス・インターナショナルの日本代表で、現在はその経験を活かし、コーチとして後進の育成に携わりながら、セルフマネジメント、外見力・印象力マネジメントに、マインドフルネスプログラム、最近では子供たちの自己表現力を高めるためのワークショップをするなど、美と教育を軸に人がより良く生きるための人財育成を全国で開催する。
肩書きを問うと「ですよね、自分でもよくわからないんです…(笑)」というほどにその活動の幅は広い。
2023年4月、ベントレーは特別な体験をその顧客に提供する旅のプログラム『エクストラオーディナリー・ジャーニー』を発表した。それは2019年にはじまるビヨンド100に基づくベントレーのコミュニケーション戦略の主幹を成すもので、大きくはデザイン、アドベンチャー、そしてウェルビーイング体験で構成される。すでに発表されているツアーはスカンジナビア、UK、ニューメキシコ、オマーン。たとえばスカンジナビアは「ストックホルムの中心部から、スウェーデンの森の奥深くでの贅沢な大自然体験、そして2023年の世界建築首都コペンハーゲンの現代の驚異へと続く旅」となるようだ。この発表から遡る数ヶ月前、限られた顧客の皆様をお招きし、日本でも同名のツーリングが企画された。いくつかのメディアでも報じられているそのツアーが骨格となり、今回ワールドワイドなベントレー・モータースの施策として発表された。冒頭の問いかけはそのツアー内で企画された金ヶ江さんによるウェルビーイング体験の一場面だ。
冒頭で触れたように金ヶ江さんの活動は多岐にわたる。そんな活動がベントレー・モータースが考えるウェルビーイングへのアプローチと重なることから、ベントレー・ジャパンが主催するツアーやイベント、ポップアップショップなどにたびたび参加いただいている。
「ここ数年間は人生の美意識を高めることをしようと活動しています」という言葉のとおり、今まで重ねてきた経験の上に、日本古来のウェルビーイングを知ることにも余念がない。そのために合気道や茶道に触れ、日本各地を旅してまわっているという。そのなかで気付かされるのが「心の動き、時間の動き、それぞれを意識すること」そのものがウェルビーイングであり、美はその先にあるものだということ。今回、撮影で訪れた「江之浦測候所」はそんな彼女が訪れたかった場所のひとつだ。
小田原文化財団 江之浦測候所は箱根の外輪山を背に相模湾を望む。各施設は、ギャラリー棟、石舞台、光学硝子舞台、茶室ほかで構成され、またそれらは日本の建築様式や工法の各時代の特徴を取り入れ再現することで、日本建築史を通観するものとして機能しているという。さらに、造園計画の基本としては、平安末期に書かれた「作庭記」の再検証を試みたとある。
「江之浦測候所は以前から訪れたい場所のひとつでした。聞けばこちらは、最終的に施設全体が滅びるところまで念頭においたコンセプト設計がされているそうです。また、時間を体感することは自身が生きていることを実感することであり、そのために冬至、夏至、春分、秋分などの季節を視覚的にも意識できるように作られていることに驚きます」
ウェルビーイングとは「ふだんの生活で無意識下に行なっているあらゆる行動をあらためて意識し、向き合うこと」であり、そのひとつの手法が冒頭の呼吸への問いかけというわけだ。
「自分で自分をコントロールするには呼吸を意識し、次に姿勢を意識すること。より良い状態は意識して作り上げることが必要だと思います」
ベントレーがエクストラオーディナリー・ジャーニーにおいて、そしてクルマ作りにおいて、双方で掲げるウェルビーイングとは、いかに精神的・肉体的にリラックスした状態をユーザーが意識しないレベルで作り上げるかにある。たとえばこの春日本でも発表されたベンテイガEWBにオプション設定される「エアラインシートスペシフィケーション」はその好例だろう。これまで自動車に装着されたものの中で最も先進的なシートとして開発されたこのウェルビーイングシステムは、世界初のオートクライメート・センシング・システムと高度な姿勢調節技術により、長時間移動の疲労度を劇的に低減している。驚くべきはこれらの高度にモニタリングされたシートと室内空間は乗車するものにとってはほぼ無意識下で行われていること。オートクライメートシートが乗員の体温と路面湿度を常に感知し、乗員を最適な温熱環境に保っていることも、カイロプラクターと共同開発したアルゴリズムにより、乗員の着座位置やツボを自動的に微調整し、快適な姿勢制御を行なっていることも、オーナー以外の乗客の大半は気付かないはずだ。
「ベントレーに関わらせていただくようになって気づいたのは、最新技術と伝統技術がとても高い思想で表現されているということ。クルマで移動することが疲労ではなく喜びに変わるような革新を続けてきたブランドなのだな、と気付かされます」
ところで冒頭の質問。1分間の呼吸数というこの質問はなかなかにユニークで、70回と答える方から10回と答える方までその差は相当なものだそう。それほどに意識をしない呼吸という生命活動だが、”吸って吐いて”を1分間に4回にまでペースダウンさせてみるとどうだろう。
「難しいことはありません。ただ全身の力を抜き、リラックスした状態になれれば誰でもできますから」
ふだんから自身でハンドルを握り、どこへでも出かけていくという金ヶ江さん。ベントレー フライングスパー ハイブリッドのハンドルを握ると、曰く「そんなリラックスした心持ちでこのクルマで海を眺めながらドライブしたいですね」それこそまさにウェルビーイング・ドライブに違いない。